小さなミキサー

いきつけの二つの病院は、大きな公園の側にある。ポンピドー病院の向かいには、アンドレ=シトロワイエン公園、モンスーリー病院の隣にはモンスーリー公園。
どちらも、今は冬枯れ。静かな佇まいだ。
同じように硝子張りだが,モンスーリーの方がかなり小さい。人も少なく、行きやすい。朝一番、小雨の中を、路面電車に乗る。地下鉄よりも清潔で、バスよりも揺れない。
検査は、無事終了したが、待っている間冷えたのか。風邪気味で迎えた翌朝、ふと林檎のすりおろしが食べたくなった。台所の棚の上に淡い桃色の小型のミキサーがある。小さくて軽い。天使猫亜子ちゃんに食餌療法をした時、針なしの注射器にいれやすいように、パテをさらに滑らかにするために購入した。何かの都合で、夜遅く作らないといけなくなった時には、アパート住まいなので、階下に迷惑をかけないように、毛布でくるんで回転させた。
A町の田舎の家に居るときは、その心配なく、盛大に作動できた。
二年七ヶ月、毎日使った。
亜子ちゃんの検査結果が悪いと判った時、獣医で倒れた。それがきっかけで、初めて心臓の検査をする事になった。そのくらい情けない飼い主だった。それでも、亜子ちゃんは、ずっと側にいてくれた。
天使猫となっても、見守っていてくれる。
久しぶりに使う小さなミキサーは、懐かしい響きをたて始めた。

影絵めくかささぎ梢に冬の朝

愛するものを最後まで看取るには、真の優しさと勇気がいります。
それをしている人達を、また猫同士を、心から応援しています。

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『ドン=キショット』

最近,気がつくとよく口ずさんでいるのが、『ドン=キショット』。幕開きのキトリの登場や、結婚式のパ=ド=ドウなど。陽気で華やかで,如何にも年末年始の舞台にふさわしい。
もう何度みたことだろう。棚に並んだプログラムは、1997年から。切符や配役表で確かめる。オーレリーとルグリ。ギエムとイレール。レテスチュとホセ。レテスチュと招待のボレロ。ドロテとエマニュエル。ミリアムとエマニュエル。超絶技巧と美貌では、最盛期のシルビー=ギエムとローラン=イレール、情感と若々しさではミリアム=ウードブラハムとエマニュエル=チボーが、一番印象に残っている。
そして、今回はドロテとパケット。
西班牙の血の流れるドロテに、キトリは適役。技術的にも定評がある。気は優しくて力持ち的なカール=パケットもエトワールになってから、よくなったと好評。森の精の女王のマリー=アニエスが休演だったのは残念だった。群舞もそれぞれ見せ所が多い。
ヌレエフの振付けは,踊り手にとっては至難の技だろうが、観客としては、次から次へと変わっていって、全く飽きない。時代背景と土地柄に忠実な舞台装置。ドン=キショットの痩せ馬も、巨大な風車もそのまま出て来る。バルセロナの町の広場も、居酒屋旅館も、見事に再現されている。目も彩な、しかも上品な衣装。闘牛士は闘牛士(闘牛反対だけれどーーー)、にせ坊主は、にせ坊主、放浪の騎士は鎧を付けて,と、皆それぞれすぐに判る。(なぜ、これが歌劇では出来ないのだろうか.同じ西班牙を舞台にしながら、今回の『カルメン』の演出の酷さ。)
そしてなによりも変化に富んだ軽快で華麗な音楽。舞台も客席も、上機嫌に巻き込んでしまう。
初めて同行したM氏は、「今まで観たバレーの中で一番好きだ」と、大喜びしてくれた。

きららかな光溢れて幕は降りセーヌ川波たゆたう夜更け

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猫と籠

天使猫亜子ちゃんが、最後まで使っていた竹の籠がある。いつであったか、日本から持って来た。長方形で比較的浅い、所謂、乱れ籠。 冬には、 灰色や薄い桃色の毛糸網の肩掛け、白く柔らかい不織布等を敷いて、ストーブの側に置いておいた。 亜子のお気に入りの場所の一つだった。外出するときは、その前までいって、「マンマ、すぐ帰ってきますからね.いい子して、待っててくださいませ、ませ(何故か調子がいいので、二回繰り返す)」と、挨拶をした。黒白猫の亜子が、丸くなっていると、絵のように綺麗だった。
その籠をどうしても捨てられなくて、とってあった。
昨冬、孫猫真心子は、全く関心を示さなかった。猫にも好みがあるのだろう.しかし,何やら寂しかった。
この師走、突然,真心子が籠に入るようになった。 亜子ちゃんがしていたように,目を半開きにして、腕だけ出している事も 、お腹をだして寝ている事もある。意外な事に、亜子ちゃんには,一杯だった籠が,真心子には隙間がある。長毛で,丸々しているので大きいように見えるが,実は、真心子は亜子よりも小さいし、軽い。亜子は、逆三角形で雌猫にしては筋肉質だったから、細く見えたのだろう。
机に向かっていて、ふと「あれっ、真心子」と、思う。そうした時「ウウーン」と小さな寝息が聴こえて,灰色のふわふわした毛が,ストーブの向こうに見えると、ほっとする。
竹籠の成功に気を良くして,M氏の台所の隅に置いてあった、これは,猫用の籐の籠をひき出す。埃を払って,M氏の古いセーターを敷き、暖房の側に置く。それまでは、小さな毛布が置いてあるだけだった。
「駄目ですよ.フェビウスは、恐がります。」
例によって、心配性のM氏。ところが、白猫フェビウスは、籠の回りを一回りしてから、中に入って横になった。
痩せているから、寒がりらしい。一日中、籠の中にいる。
この籠も、ミナ、ミュッセ、カリーナ等が代々の猫達が使っていた。

いじこよりさえずり鋭く年の暮れ

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杉木立

「ね、ひどいでしょう。」
昔、母は,笑いながら言っていた。姑に、名前を変えるように言われたそうである。「おまけに、静子って言うの。」
どちらかといえば、快活で気性の強いところのある母だから、長男で独り息子の理想的な嫁には、向かなかったのだろう。
苦手のお裁縫をさせられたり、映画や友達とのおしゃべりもままならぬ同居生活は、ごく短く終ったそうである。その間のことかもしれない。
「静子ねえーーー」
私も、苦笑した。
その母が、『静』の名のつく土地に、終の住処をみつけたのだから、不思議だ。実は、全く馴染みの無い名前ではない。一頃、母と文化教室に通っていた。その帰りのバス停留所で、この土地を行き先に表示したバスが通るのを何時も見ていた。綺麗な名前だと思っていた。
コスモスの花は散り、雪もちらつく北山杉の山に近い土地らしい。三ヶ月が過ぎて、83歳の誕生日も祝ってもらった。
還暦から今まで、五度の引っ越しと二度の入院生活。それが、やっと落着いた。母は、初めて特別養老施設で年始年末を迎える。そのためには、目に見えない糸で総ての縁が、繋がっていたとしか思えない。そのどれが、切れても、叶わなかったろう。
「お母ちゃんが、『静』のつく所に住むとはねーーー」
亡父は、笑っているような気がする。若い頃のようにちょっと小太りで、和服で、胡座をかいて、機嫌良く仰向いて。
「これで、やっとお父ちゃんも安心できるよ」
裏切られても、別れても,亡父は、多分最後まで母の事を気にしていただろうから。

思ひやる墨絵のごとき杉木立深夜雪降る京の山里

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公園の鴨

久しぶりに冬ざれのアンドレ=シトロワイエン公園を散歩する。
この所、日中はなんとか保っても、夕方は雨になることが多かったので、少しでも晴れ間があるうちに、と、M氏の検査の結果を受け取りにいきながら、出かけることにする。
道は,濡れている。しかし、見上げれば、薄い灰色の雲の間は、青みがかってさえみえる。この二ヶ月間、多いときは一週間に二度、M氏は、早朝血液検査に通って来た。これからも、しばらく続くだろう。潤んだように大きな目の小柄な女医さんは、柔和な声で「よかったですね。大丈夫ですよ」と、言った。そして、わざわざ出て来て、M氏と私の頬にキスをしてくれた。
検査所を出て、現代的な建築の住宅街にはいる。一般には現代建築が苦手な私達だが、この界隈だけは、不思議と気持ちが落ち着いて、気に入っている。すぐそばに、緑の多い、アンドレ=シトロワイエン公園があるからかもしれない。
桜並木は、勿論花はない。しかし、枝枝には、すでに小さな芽が準備されていることだろう。緩い坂を下った芝生は、緑。あたりの枯葉色とは,好対照だ。水量の豊かな流れを、鴨が泳いでいる。四羽は雄、二羽は雌。おや、雄同士、小さな喧嘩。おいやられてもすぐに戻って来る。
「A町の鴨と、一緒だね」と、M氏。この夏、氏は、毎朝、運動公園の池を巡って鴨達の数を数えていた。
「寒すぎるとね、病院に避難しているよ」
公園の反対側には、ガラス張りの大きなポンピドー病院。二ヶ月程前、M氏が、救急で運ばれたのは、どのあたりだろう。幸い倒れたわけではなかった。
白いゆりかもめに似た鳥もいる。多分、すぐ側を流れるセーヌ河から来ているのだろう。名物の気球は、地上に停めてあった。
「いつか乗ろうといっていたね」
「暖かくなったら,乗りましょうね」
ゆっくり歩いて、出口に向かう。両脇は、枝垂れ桜等の若木。M氏のお気に入り道である。

竹そよぐ真冬の庭に碧濃く

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Author:桐の葉も
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