『この子が、いるよ』

『絶世の美女』は、ともかく、孫猫真心子ちゃんは、とても性格のいい猫だ。
咋年の夏休みの終わりに、真心子ちゃんの生家「あっちのおばあさん」G夫人の家へ、電動のこぎりを返しにいった。伸びすぎた生け垣の貝塚伊吹を剪るようにと、折角貸してくれたけれど、私の力では、ちょっと使いこなせそうもなかった。
どちらにしても、五匹の猫達、真心子ちゃんの子供や孫に会いに行く約束なっていた。
今年86歳の夫人は、脚は悪いが矍鑠たるもの、猫を可愛がる点では、人後に落ちず、記憶力は抜群。三人の息子も娘も同じ町に住んでいる。
掃除の行き届いた明るい居間には、家族の写真が所狭しと飾ってある。
「これが、私の両親。これが、子供達の小さな時。この娘が、今肉屋をしている孫の母親。かわいそうに、若くして未亡人になってしまって。これが、主人の父親。これは、主人の母親と主人。三人とも、私がこの家で看取ったのよ。最後まで。」
骨張った大きな手で写真を指差すG夫人の眼は、どこか誇らしそうに輝いている。
夫人の亡夫は、がっちりとした大男。80過ぎまで、元気だったが、最後は、やはり寝台にいることが多かった。
「ちびちゃんと、とても仲がよくてね」
「ちびちゃん」は、真心子。いつも布団の上に寄り添って一緒に寝ていたそうだ。
「ある日、看護婦さんが、いつものように注射に来たの。たまたま家の中に、誰もいなくてね。それで、『今日は、お一人ですか』って。そうしたら、主人が、何て答えたと、思う、『この子が、いるよ』って。ちびちゃんを、指してね。」
真心子は、G氏が、息を引き取った時も、寄り添っていたという。

つかの間の冬の青空しら雲をかすめて飛びかふ鳥の一群(むれ)


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雨と白い花畑

一月も下旬と言うのに、この冬は未だに雪が降らない。
雨がちで、一日のうち一度は、道路も冬枯れの樹々も濡れている。細かい静かな雨。
こうした天気を『ブルターニュの何か』と呼ぶ、仏蘭西人の友人が教えてくれたが、最後が思い出せない。友人は、大半の仏蘭西人同様、傘嫌い。何時も折りたたみ傘を持ち歩き、最初の一滴で広げる私を、あきれるように笑っていた。
それでも、夏の発病以来、気をつけるようになったらしい。

「白いお花畑かと、思ったの。」
国際電話の向こうで、母は、可笑しそうに笑っている。昨日、大雪が積もったそうだ。京都も北の方、山合の特別老人施設に入って二度目の冬。旧臘、訪れてあるから様子が眼に浮かぶ。
「窓から見える畑もその向こうの杉の小山も、真っ白でしょう」
「そう、お天気がいいから、本当に綺麗なの」
大きなガラス張りの窓際の寝台に恵まれて、母は一日中外を眺めている事ができる。
白い浮き雲や、夕焼け。畑に降り立つ鳥達は、もう余り見分ける事はできないだろうが。
それにしても、古典の和歌によくでてくる花と雪とを見まごうというのは、案外本当かもしれない。弱く優しい自然の光の中なら。
電話も切る前には、いつも尋ねる。
「今日のお八つは、何でした」
「今日は、貰わなかったの」。そして、すぐに「あ、貰ってた。あんこの何か。お母ちゃん、忘れるから駄目ね。」
自分でも、笑っている。
大好きなエクレアの時は、忘れないらしい。二人で笑いながら電話を切った。
車椅子を押してくれているのは誰だろう。訪問した時も、今時、こんなにいい子達がいるのかと、思った程、皆優しくて親切だった。

母の戻る寝台の枕元の壁には、往年の名優シャルル=ボワイエや、コルシカの青い海の写真と一緒に『絶世の美女』真心子ちゃんの大写しもはってある。
「絶世の美女?」
そう。私の日本滞在中孫猫真心子ちゃんの世話をしに来てくれた元獣医助手F君は、猫の写真を撮るのが趣味。おっとりのんびり真心子ちゃんは、「最高のトップ=モデル」だったという。一枚を日本の猫好きさんに送ったところ、この称号が返事に来た。
「『絶世の美女』ねえ。」
例によって、お腹を出してご機嫌で眠っている。

薄雲に暖炉の細き煙消え


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