『蒙古、二つの時代の間、1912−1913年』展アルベルト=カーン庭園

仏蘭西の俚諺に『四月は、糸一本脱ぐな』とある。実際、初夏を思わせた三月の陽気に続いて、今月は、急に気温が下がった。
植物が一番敏感に反応するのだろう。染井吉野は、おずおずと新芽を覗かせるばかり。びっしりと花弁の重なった満開の八重桜は、時が止まったよう。それが、此処数日の強風に散り、拭き寄せられ、薄紅の波となっている。
アルベルト=カーン庭園は、椿と躑躅とが同時に花盛りを迎えた。艶やかな葉に囲まれた背の高い椿の赤や白の大輪の花と、足元の橙色、朱色、紫の小さな躑躅が妍を競っている。
初めて『蒙古 1912−1913年』写真展に来た時には、花といえば、英国式庭園の黄色い喇叭水仙だけであった。友人でもある解説員の案内で見学した。彼女自身、既に何度もモンゴルを訪れている。体験に基づく説明は、興味深かった。
私も、高校生の時は、西域考古学者になりたかった。井上靖の小説や、へディンや岩村忍の著作で、広大な砂漠や緑の草原に憧れた。受験と家庭不和で逼塞したような思春期だったから、広々とした世界を夢見たのかもしれない。しかし、探検中は入浴できないかもしれないと気付いて、夢はあえなく破れた。
数年前続けて現代の蒙古を主題とした映画を観た。『泣いている駱駝の話』『蒙古の黄色い犬』。蒙古生まれの女流監督バーンの作品。美しい自然と細やかな人情、全編に溢れる生きとし生きるものへの優しい眼差しが、忘れがたい。再び蒙古への憧れが蘇ってきた。
前回の説明を思い出しながら一人で見る。
72枚の写真と、数点の発掘物がゆったりと空間をとって展示されている。
20世紀初め、蒙古には、中国人露西亜人も混在し、複雑な政治状況にあった。1911年、辛亥革命、1913年内蒙古独立運動勃発、1917年露西亜革命と激動の時代。探検隊露西亜と仏蘭西の国旗を掲げていたので、暗殺を免れたかもしれないという挿話もある。その狭間の内外蒙古人の生活ぶりを示す、貴重な資料である。
私には彼らと自然の繋がりが、一番興味深かった。聖なる木への信仰、永遠へ魂を運ぶ動物が鹿から馬へと変化したらしい事、道祖神にも似た土地の霊への仏教伝来以前の信仰(三回廻って石を積み重ねていく)、地面を痛めない為,恐らく虫を殺さない為に先の上がった靴。殺生を償いながらでなけでば、狩りをしない猟師達。彼らの住まいであるユルトは、頂上と地面近くに隙間があり、空の霊と常に交流している。 人間の三倍の動物達が住む土地。 家畜の群は放牧されている。「うちの馬達を見なかったかい」といって、探しまわる話には、映画でみた老人達のゆったりとした様子がおもいだされる。 展示写真には、馬や犬達があちこちに顔をだしている。最後近く、静かに坐る白い馬は、どのような一生を終えたのだろう。
ポスターにもなった緑の草原に坐る二人の僧の眺めるウランバートルは、もはや昔日の面影はない。
僅か百年しかたっていないというのにーーー。
画一的な近代化の波、欧米からの一方的な価値観が、はたして幸せをもたらすものだろうか?
アルベルト=カーンが、世界各地へ写真撮影隊を派遣した理由は、単純ではなかったのかもしれない。しかし,彼の意図はともかく、これらの資料は、他の民族固有の伝統や文化、風習、習慣、宗教等を尊重し、彼らを自分たちの利益の為に利用しないことの大切さを如実に示しているような気がする。

今もなお犬の遠吠え響くらむ銀の星降る草原の夜

『スーホーの白い馬』という絵本があります。悲しいけれど、美しい話です。

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