石榴(二)

(承前)

晩年は、やせ細っていた父も、若い頃は、ふっくらと時代劇の役者風の容貌で、通りかかると、女学校の生徒達が窓から見ていたと言う。私の覚えている頃でも、山田寺の仏頭や歌舞伎の松本白鴎に似ていた。
下宿先のY家には、働き者のお内儀さんと、娘のSさん、その弟。かなり横柄なご主人だったから、物静かで穏やかな父は、一層「にいさん、にいさん」と、慕われたらしい。そのまま、9歳年下の妹のようなSさんと結婚した。
「後から聞くとお母様(父の母)は、嫌がったそうよ。何だか婿養子のようで、大切な一人息子を取られるようなきがしたのでしょうね。」と、母。
親孝行の父ではあったが、神経質で病弱な実の母親よりも、朗らかで拘らないY夫人の側の方が恐らく、気楽だったのだろう。
それは、男女一組とも家同士とも違う、既に出来上がっている一家にすんなり溶けこんでいく婚姻だった。両親が不仲で冷たい家庭を嘆いていた父は、何よりも家族の団欒に憧れていたらしい。
そのY家の庭に、大きな石榴の樹があった。塀越しに枝がみえるほど立派な樹であった。 他では、見掛けない珍しい樹であった。 花盛りには人目を奪った。
しかし、Sさんは二十歳そこそこで脊椎カリエスとなった。父は、寝たきりの新妻の枕元を綺麗に片付け、暑い日には団扇で仰いでやってから、焼け跡の研究所に通っていた。「Sさんは、幸せだ」と、女学校の仲間達は噂した。Sさんは、まもなく逝った。色黒で丸顔、丸い眼、太い三つ編みのあどけない写真が残っている。

ゆりかもめ見してふ声に老い遠し

にゃんわんプロジェクトへ


東北地震犬猫レスキュー.comborder="0">


にほんブログ村 猫ブログ 猫 海外生活へ
にほんブログ村




Profil

桐の葉も

Author:桐の葉も
Bienvenu à FC2 Blog !

Derniers articles
Archives mensuelles
Catégories
Recherche
Lien