黒犬と老女

春分も過ぎた。日本では、桜が見頃間近らしいが、巴里は春寒。彼岸桜の一種だろうか。ほの白く小さな花が、ちらほら、曇り空に紛れている。
しかし、日は長くなった。夕刻プールの猫さんたちに会いにいこうと、聖母被昇天通りに出る。脚を早めて黒い犬と老女を追い越した。犬はよろけるではないが、ちょっと足もとが危ない.思わず振り返った。ふさふさとした尾に比べて,痛々しい程細い脚。顎髭のような口の回りの毛は,白くなっている。「優しそうな犬ですね」
「とっても、優しいの。本当に優しいの」老女は、皺のよった顔を、一層くしゃくしゃにして笑った。「捨て犬だったの。」 少し乱れた白髪、 陽に焼けているのか,地肌なのか、駱駝色の顔と同じ色の、上等だがやや古びた外套。裏皮の長靴も少しくたびれている。 足下の犬は尾を振って彼女を見上げている。その頭を撫でながら、笑顔を崩さずに言う。「人間は、善くないね。捨てなくても、ね。今まで十一匹飼ったけれど,皆捨て犬。」「この子は,幾つくらいかしら」「施設の札には五歳とあったけれど、もっといってるわね」「ええ。でも、この子は、貴女と巡り会えて本当に幸せですよ。」日本語では、ちょっと不自然に聴こえるかもしれないが、仏蘭西語では、この表現が一番ふさわしい。皺を一層深くして、彼女は笑った。
公園に散歩に行くという犬と彼女と別れる。
プールの無人官舎の庭は、紫の花におおわれていた。何処にいたのか。黒白の娘猫が駆けて来た。 今月初めの大雪で、プールまで来るのが大変だなどと思って,申し訳なかった。
3月7日付け、巴里の日本人向け無料新聞『ニュース=ダイジェスト』に福島に置き去りにされた動物達と彼らを救おうとする人々の特集が出ていた。表紙の太田康介氏撮影の黄色い猫は、浪江町のショッピングセンターでやせ細りミイラ化された姿で見つかった。飯館村でつながれたままで、ボランチアとして散歩に連れて行ってくれる佐々木ちはるさんにしがみつく人恋しいマック等 。その陰には、捨てたくて置き去りにしたのではない飼い主達の辛さも偲ばれる。
仮設住宅へ家族の一員としての動物同伴入居が許されていれば、避ける事のできた残虐な死も多かった筈なのにーーー。

主なき庭の垣根の根元にも紫の花二匹の猫と

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