ショパンの肖像画

「ドラクロアの描くショパンの肖像画を、観たくて」
若いピアニストさんは、持ち前の少し低めの声で、しかし快活に言った。
四年前、初めて知人に紹介されて、6区の有名なブラッスリーで夕食を一緒にした時、まず好感を抱いたのが,この静かな声と落着いた話し振りだった。音楽大学を卒業したばかりで、初めて親元を離れて留学生活をする、心配だから、何かあった時に、という事だった。今風の賑やかな娘さんだったらーーーと、少し恐れをなしていた。ところが、殆ど俯いたままで、口も余りきかない。しかし、挨拶はきちんとする。小柄で色白、長い髪に切れ長の眼、派手な表情は全くしない。両親揃って、「芯の強い子だから」と、評していた。
その通り、 毎年 優秀な成績で試験に受かり、一年の筈の留学が四年となった。その間、蛹が蝶になるように、というよりも、もっと確実で無理のない変化を遂げていった。草花というより、木の花。彼女の祖母がよく描いたと言う杏の花のようだ。知っている人は知っている美しさ。地に根を張り、豊かな実を結ぶ。
「オルセーでは、ないの」
「いいえ、ここの筈なのですが。友達とも何度かきて、その度に探したけれどみつからなくて」
阿蘭陀絵画、仏蘭西絵画等をゆっくり観て廻る。例のル=ナンの猫達の他ヤン=フォン=フエンスベンやモンチセッリ等の猫達も新しく見つけた。
しかし、ショパンは係員に聞いても「知らない」という。コローを堪能した後、まだ来た事のない部屋に進んで行った。
突然「あった」の声。
次の部屋との境の壁の一番端に、かかっていた。
「ここにいたんですね」と、嬉しそう。ショパンといえば、まず出て来る有名な肖像画。考えてみると、本物を見るのは、私も初めてだ。
「28歳、ちょうど私と同じ年。やはり、弱々しそうですね」

まず顔色が悪い.眼の下の隈もほとんど青くみえるほど。頬が痩けて、鼻梁が高く目立つ。窪んだ眼窪に熱にうかされたような眼差し。それを、内側から支えている気品に圧倒される、
元は、ジョルジュ=サンドの肖像と一緒になる筈だったそうである。
彼女の小説の舞台の多くは、我が家の田舎の家のあるソーローニュに接したベリー地方。森や畑の広がる極素朴な牧農の地だ。サンド自身、その地で活発な少女時代を送り、生涯健康には恵まれていたらしい。
二人を、並べて見てみたかった。
それにしても、ショパンの肖像画に見入っている、寧ろ地味な娘さんが、ピアノに向かうと全く変わってしまう。一生打ち込める好きな道に、子供の頃から進んでいるーーー誰もが持つ事のできない幸せだろう。

短か夜の果てに一ひら薄き雲

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