『ハンナ=アルダント』(映画)

久しぶりにいい映画を観た。『ハンナ=アルダント』
ある日、偶々通りかかったゲーテ会館に出ていた映画の広告に引きつけられた。赤い鉤十字旗を背に、中年女性が、何かを見つめている。その真摯で重厚な表情が、印象に残った。さらに「『他者の人生』以来の最良の独逸映画」という謳い文句が気になった。東独逸の諜報部員が、職務に背いても危険人物とみなされた男を組織から守る。冴えない容姿の主演俳優の寡黙な名演もあって、忘れられない映画だからだ。ネットで調べて、M氏に聞く。「ハンナ=アルダントを知っていますか?」「知らない人は、いないよ」と、あきれかえった顔。歴史の授業で習う用語『全体主義』の発案者である。ハイデッガーの愛弟子でもあった。
しかし、映画は、米国在住猶太弥系独逸人女性哲学者の人生の或る時期に焦点をあてている。有名なエイフマン裁判との関わりと、寧ろ其れ以上にその後の社会や世間、周囲の人々の反応と、それに対する彼女の姿勢に。
「私は、ある国民を好きなのではないの、友達が好きなの」
彼女に裏切られたと思い瀕死の病床で顔を背ける旧友に、彼女は一生懸命語りかける。かつての仲間が、休暇先まで追いかけて来て人影のない森で脅されても、彼女は声を荒げる事もなく、毅然と歩み去って行く。
その彼女を支える夫や学生達。
彼女は、思索する。迫害や中傷にも関わらず、それを表現しようとする。
国家や民族という集団としてではなく、一人の人間として思索し表現する自由。時の政治思潮の利害に影響されず、歴史上の事実は事実として、認識する学者としての誠実さ。
女流監督は、既に『ローザ=ルクセンブルグ』も撮っている。主義主張は違っても、常に思索と表現の自由を擁護する視点は、一貫している。
思索は孤独な作業だ。
その当たり前の事が、最近はおろそかにされている、または、させられているような気がする。

聞き知りし香おり仄かに地を掠め菩提樹なりけり昧爽の風

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