ほぼ同じーーー

A町の旧町内の一方の端は、聖マルタン教会、もう一端は、今では町役場となっているS城である。
巴里から来て町を迂回する街道と城とを繋ぐ短い小路が、カンブルナック通り。私は、巴里のかかりつけの獣医の最寄りの駅カンブロンヌと間違えては、M氏に笑われる。城壁跡に沿った掘割に懸る橋から城の入り口まで、家数にして十数軒。この通りは、A町で最も上品な一角とされていた。城のすぐ近くなので、かつては代官屋敷もあり、今でも代々の公証人の事務所がある。カンブルナックは、百年以上も前の県庁所在地Bの名医。その為か,往時町の名士の一員であった医者の家も多い。
M氏の少年時代から、町には常時三人の医者がいた。各家庭で自ずから、掛かり付けの医者が決まっていた。M氏の家では、フルニエ先生。
「祖母も罹っていました。パパイン=シロップをくれていました。癌だったのですがーーー」
M氏の一番の幼馴染み、氏が名前を呼び捨てにし、『チュ(君)』で話す数少ない相手の一人Rは、子供時代から医者をめざしていた。M氏とRともう一人、三人組は、よくフルニエ先生の二人の娘を誘っては、散歩をした。姉妹は、三人とほぼ同年輩。ただし、夜の九時半以降にならないと外出を許されていなかった。
「それって、反対ではないですか。」
「いや、フルニエ先生は、町の人に見られるのを嫌がってね。九時半以降なら、誰にも気付かれないから、夜中まででも自由でした。」
「———。」
Rは、頭のいい妹娘Jと結婚する筈だった。二人とも巴里大学の、Rは医学部、Jは薬学部に受かった。二人でフルニエ先生の後継者になる心積もりだったらしい。
ところが、Jの母親が、Rに言った。
「うちの娘は、医者なんかよりも、もっといい結婚相手が見つかるはずですよ。」
自尊心を傷つけられたRは、Jと別れた。当時M氏は、南仏にいて手紙で仔細を知らされたそうである。
ところが、後年、医者となったRが,最初の結婚の後、再婚した相手の名前が同じJ。さらに、A町の医師に空席があり、年老いた両親の為にもと、一人息子のRは,故郷に戻ってくることとなった。
陽気で腕のいいRは、たちまち町の人気医者となった。華やかで明るい年若い奥さんと居を構えたのが、 カンブルナック通りの大きな家。
「最初のRの予定とは、ちょっと違ったけれど、結果はまあ似たようなものでした。」
段々周囲が寂しくなって行く中、幼友だちが元気で居てくれて、M氏も心強いらしい。

ラヴェンダーの花柄をめぐる蝶と蜂


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