水色のかん

「丁度よかった、あげたい物があったの。」
国際電話の向こうで、開口一番母が、言った。
特別養老施設に入っている母からの贈り物、何だろう。
「昔からブリキのかんとか好きだったでしょう。」
「うん。」
「誰に貰ったか、忘れたけれど、とても綺麗な水色のかんがあるの、取っておくわね。」
この文を書いている今も、母の声を思い出すと、ちょっと涙ぐみたくなる。
「ありがとう。」
「とっても綺麗な水色なの。」
子供の頃から、空き箱や空き缶を集めていた。特に金属製のかんは、しっかりしていて何を入れるにも便利で大事にしていた。当時は、色数も少なく模様も単純だったが、何時頃からか、色彩豊かな可愛い絵の付いた容器が増えた。
巴里のアパートにも日本から小物を入れて持って来た大小の箱がある。特に南仏のパン捏ね台を模した二十世紀初めの家具の中には、ほぼ大きさを揃えた箱が並んでいる。「アンの館」というクッキーの入っていたかんは三個。周囲は淡い紅で、可愛い女の子達が揺り籠の中を覗いたり、猫が戯れたりしている絵が描いてある。一つには、やや高価な宝石類、後の二つは、昔からの装飾品。小学生の時、京都へ家族旅行した時買って貰った筒型の赤い布張りの蓋物、亡父の外遊土産のハンガリー製の鳥の刺繍入りの小箱等に細々仕舞ってある。ごく幼い時に母が買ってくれた金属製の目の大きな猫のペンダント、もう動かないけれど皆に羨ましがられた時計のロケット、母の亡くなった親友のサンフランシスコ土産の路面電車のブローチ。他にも一つ一つに思い出がある。今でも、時々使っている。四十年は経っているから、却ってアンチックのようで、好評だ。
この話をすれば、母は、いつものように「物持ちがいいものね。」と、笑うだろう。
それにしても、水色。好きな色だ。
青磁、秘色、水浅葱、納戸、トルコ青、どんな水色なのだろう。

晴天の夏の日落ちてくれなずむ空の底まで水色の光(かげ)



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桐の葉も

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