庭の洋梨

今年は、庭の洋梨が豊作だった。一メートルにも満たない小さな古木は、もう七十歳程のはずである。それが、二十一個の実をつけた。
先月、まだ小さく固い青い実を五つもいだ。多すぎると木が、弱るから。食卓のヴァロリス焼きの深鉢に、黄色い林檎や檸檬、翡翠色の青梅の実と一緒に盛った。南仏の明るい陽射しがそのまま焼き付いているような黄土色の器に、大小丸い果物の緑と黄色が、よく映っている。
こちらに来ていつのまにか、果物を彩りよく飾っておくようになった。ちょうどセザンヌの絵のように。
洋梨は、もいでから熟れるのを待つものと、教えてくれたのは、仏蘭西人の友人だ。生粋の巴里人を誇るわりには、田舎の生活をよく知っているのは、六歳まで郊外で大好きな祖母に育てられたからだろう。
家の前に椅子を出し、お互い孫達を遊ばせながら、御喋りしつつ一刻も手を休めないで編み物をするお祖母さんたち。絞り立ての牛乳を沸かす時にできる皮膜、畑で熟れた苺やトマトの色と香りと味。
祖父母に育てられた人には、どこか柔らかな暖かさが感じられるのは、何故だろう。多少気難しくて神経質でも、心の底から優しい。
その人が、病気となった。何もしてあげられないので、祈るだけだ。以前敬虔な新教徒である小塩節が幼い息子が病気になり、余り辛くて祈れなくなりそうになった時もあると、書いていた。天使猫亜子ちゃんの病いの間も、くじけそうになった。それでも祈る、何かに。
「祈りは、人間の最も崇高な行為の一つですよ。」と、教えてくれたのも、祖父母と一緒にいた知人だった。
つれなくされても、撫でさせてくれることさえ稀でも、友人は亜子の放射線治療代も、最後の御見送りの費用も出してくれた程可愛がっていた。だから、一層天使猫亜子ちゃんにも祈る。
五つの洋梨は、淡い黄色となり、本の一口だけれど、芳醇な味と香りを楽しむ事ができた。残りの実も、もいだ。三つだけ、小鳥さん達に残して。
御見舞いに持って行く頃には、熟れてくれるだろうか。

菩提樹の梢は高く夕焼けの空の外より一陣の風


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