管理人さんと猫のビリー

近頃では、いい管理人さんに出逢うのは、僥倖と言っていい。
フランス語でコンシエルジュ、「建物の管理人」『門番」と訳されている。しかし、もっと様々な仕事をこなす。朝夕のごみだし、階段や廊下、入り口の広間,時には中庭の掃除、郵便物の配布、不在小包の預かり、そして、留守の時には,犬や猫や小鳥、植木鉢の世話まで。大抵入り口脇の、白いカーテンのかかった硝子扉の部屋に住んでいる。出入りの様子にも目がいくのだろう。メグレ警視やタンタンも、事件が起こると、まず管理人に聞き込みをしている。
夫婦者もいるけれど、どちらかといえば、独り暮らしの女性が多い。
数ヶ月前、巴里の住まいの管理人さんが替わった。それまでは、道路を挟んで二番地先の集合住宅の管理人が、兼業していた。夫婦者だが、仕事は夫の方がしていた。いつも不機嫌そうな顔で、取りつくしまも無い。奥さんは奥さんで、休暇の間の郵便物の転送でも頼もうものなら、「うちの仕事ではありませんよ。50世帯の面倒をみているんでうからね」と、剣もほろろ。年末の手当や、葡萄酒の差し入れなどでご機嫌をとっても、愛想の良い顔は長く続かなかった。
それが、今度は隣の建物の管理人さんが、兼ねてくれることとなった。
実は、彼女は知らなかったが、彼女の猫とはすでに顔なじみだった。道路に面した窓辺で、よく外をみていた。窓枠の外側に透明の板を填めて、陽にあたるように工夫してある。きっと可愛がっているのだろうと、微笑ましかった。薄茶色と白の長毛。かなり大きい。丸顔で、白と薄茶がちょうどよく斑、目が杏仁型に切れ長だ。立ち止まって見ていても、おっとり、逃げようとしない。「本当に、猫らしい顔ね』。思わず呟いてしまう。
わが家の真心子ちゃんは、何故か猫というより、日本人形のような顔立ちだから。
ある日、扉の前に封筒が置いてあった。新しい管理人さんの挨拶状。携帯もメールも書いてある。
数日後、わが家の建物の入り口の大鏡の枠の上を、梯子にのって掃除している姿を見た。二十年近く住んでいるけれど、こんな事は全く初めてだ。前の管理人さんは、掃除機をかけるのがやっとだった。
小柄な丸々した金髪女性が、「よいしょ」とかけ声をかけて降りて来た。まん丸い目が、すでに笑っている。
早速、猫の話。
「前に飼っていたのに、死なれてね、もう飼うまいと思っていたの。ところが、友達が会社の人から聞いたといって、貰ってくれって。そうでないと毛皮屋に売られてしまうんだって。」
そう、最近はやりのフードの縁についている毛は、犬や猫の毛が多いそうだ。
「最初はね、迷ったの、なかなか懐かなかったし。でもね、わかるでしょう。今は幸せよ」
今回巴里にもどったおりにも、好物だという山羊のチーズを届けた。命拾いをしたビリー君も、長い尾をゆさゆささせながら、すり寄ってきてくれた。

教会の丸屋根の先の鐘楼に飛び交う二羽の鳩の鳴き声

にゃんわんプロジェクトへ


東北地震犬猫レスキュー.comborder="0">


にほんブログ村 猫ブログ 猫 海外生活へ
にほんブログ村






Profil

桐の葉も

Author:桐の葉も
Bienvenu à FC2 Blog !

Derniers articles
Archives mensuelles
Catégories
Recherche
Lien