誕生日

昨日、雨もよいの一日、静かな誕生日を過ごした。
この年になると、誕生日を祝ってくれる人が、生きていてくれることが嬉しくなる。
朝、母に国際電話。「今日、何の日か覚えていますか」
「さあ、何だったかしら」
「私の誕生日。生んでくれてありがとうって言おうと思って」
「ああ、そうだったかしら。何だか忘れっぽくて、駄目ね」
そういいながら、おっとり、のんびり歯のすっかりなくなってしまった口を開けて笑っているような気がする。
近頃下がった目尻がますます下がって細くなっている事だろう。
私が子供の頃の般若のように恐ろしかった顔とは、正反対のーーーいや、般若とお多福は同じ顔だったのかもしれない。
「お八つ、美味しかったですか」
母は、甘い物が大好きだ。入っている特別養老施設は、お八つに母の好物を撰んでくれるらしい。
「うん」
「何だったの」
「さあ、何だったか。忘れたわ、でも美味しかった」
「忘れても美味しかったのなら、よかったわね」
「本当に、そう」
多分、また声にならず笑っているのだろう。
最後に必ず「ありがとうね」と丁寧に言って、電話を切る母は、後一ヶ月で85歳だ。
一足先に85歳となったM氏からは、前夜、はやばや電話があった。
「お誕生日、覚えていますよ」
と。睡眠が不安定で、朝、寝ている事もあるので、要心して先に祝ってくれたらしい。
母の電話の後は、携帯へメールが届いていた。昨年夏、肺癌第四期とわかったフランス人の友人から。
「お誕生日、おめでとう」14ヶ月続いた化学治療を終えたばかり。今のところ疲労が激しいらしい。それでも、月違いで同じ日が自分の誕生日なので、覚えていてくれたのだろう。夜には、電話もくれた。かすれた声で咳もひどいが、「できれば、トロッキングでもして少し筋肉をつけないと」と、言っている。
三人に祝ってもらえて嬉しかった。
ふっとよぎる「来年はーーー」の思いは、通り過ぎた時雨のように払ってしまおう。
お昼には、プールの猫さん達が、母猫娘猫そろって、餌を食べに来てくれた。
家では、抱き上げた孫猫真心子ちゃんが、盛大にごろごろ咽を鳴らして肩から降りようとしない。最近くしゃみがひどいので、天使猫亜子ちゃんに、お祈りをする。
そうして静かに迎えた夜。
天気予報は、再び晴天が戻って来ると告げていた。

むら時雨香を聞く間にあがりけり

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桐の葉も

Author:桐の葉も
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