昔のヴィデオ

我が家には、フランス人の友人から貰ったヴィデオ=デッキが,未だ健在。
秋雨の午後、昔のヴィデオを取り出した。渡仏して間もない頃、まだ元気だった母は、三ヶ月に一回ほどは、当時巴里では手に入りにくかった乾物や新聞の切り抜き、本と一緒にヴィデオカセットを送って来た。オペラやお能、歌舞伎、宝塚、美術・自然関係の番組等。私が好みそうなものを撰んで、というよりも、母の好きなものはほとんど私の好きなものだった。性格は正反対なくらいなのにーーー。
 今日は、まず『スペードの女王』1992年マリンスキー劇場での録画。今では、世界的指揮者ゲルギリエフが,弱冠39歳、黒髪がふさふさしている。サンペテルスブルグでの録画を初めて許された時で、総て露西亜系の歌手は知らない名前ばかりだったが、今聞いても皆美声である。華麗な舞台装置、衣装、バレーを含めた演出、すべてプーシキンの原作の世界をそのまま再現している。それが、含蓄の深い歌詞、うねるような旋律、柔らかい露西亜語の発音と、総て相まって芳醇な一時を作り出す。最後、リーズの幻に語りかける場面では、涙がでてしまった。(バスチーユ=オペラ座の精神病院版とは、大きな違いである)。
ついで、井上八千代さんの「米寿の舞」の特集。馴染みの京都祇園。大好きな地歌舞「雪」。今回ふと気付いたのは、八千代さんの着物の着方である。襟元を深く合わせ、後ろはほとんど抜かず、なで肩の儘、胸元にもゆったり皺ができている。帯の手も、少しななめにずれている。最近の皺一つないまでにぴんと張った、どこか不自然な着方に較べて、なんとなよやかで楽そうなことだろう。一生着物ですごした祖母や 、外出は常に着物だった母の着方を思い出させる。私自身、「着物は、纏うように着る」と教えられていた。
23年前、母の録画してくれたヴィデオを観ていると、そのまま時がとまってしまっているような気がする。

遠き日に母の愛せし菊菱の着物我にも派手となりぬる
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桐の葉も

Author:桐の葉も
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