小さな宝物

夏休みの間、田舎の家に持って行っていた装身具を元の箱に収める。宝石箱ではない。「赤毛のアン」の時代を思わせる女の子達の絵が付いている桃色のクッキーの空き箱三個と、箱根寄せ木細工の三段重ねの文箱(これは、父の遺品)。中には
和菓子の空き箱、天鵞絨の宝石用の器、フランス人の友人のくれた小鳥の絵のピルケース、台湾製の絹の綿入りの袋等々が、入っている。それらに、一つずつ、または数個一緒に仕舞っておく。
所謂高価な宝石は、一つもない。ただ、その一つ一つに思い出がある。
例えば、指輪。面長な顔に似合わぬ骨太な手を恥ずかしがっていた母は、指輪はほとんど嵌めなかった。ただ自分の好きな色の紫水晶の大きめな指輪と,濃い緑の翡翠の指輪を持っていた。翡翠の指輪は,伯父が最初の海外出張で香港で求めて祖母に贈ったものを、伯父に可愛がられた母が遺品として貰い、私に譲ってくれた。小太りの印象の強い祖母であるが、明治の女らしく骨細だったのだろう。右手のお姉さん指に、ちょっときついくらいである。母は、多分嵌めることはなかったようだが、お守りのように大事にしていた。
珊瑚の首飾りやブローチは,台湾に勤めていた頃の父のお土産。還暦を越えての単身赴任だったが、父にとっては、第二の故郷だったらしい。
昔の恋人からの熊さんのブローチ。出世した年下の友人からのクリスタルの首飾り。 長年の猫友さんからの銀色の猫のピアス等々。
中でも気に入っているのは、子どもの頃母が買ってくれた猫のペンダント。60年代風なのだろう。赤い水玉の洋服をきてリボンをつけたお洒落な金色の猫。大きな眼が悪戯っぽい。恐らく、最初のアクセサリーだと思う。
過去がこういう形で残っている。長い間に贈られてきた物を眺めていると、その時々、自分がどんな印象を与えていたのか、ちょっと想像できるような気がする。そして、掌に乗せて眺めていると、時を経たもののみのもつひっそりとした暖かみが伝わって来るように思える。

黄昏れの中行くバスの車窓より遥かに見下ろすセーヌ川波


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桐の葉も

Author:桐の葉も
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